~まず、はじめに~
3回シリーズでお届けしております「革新的な医療機器展」イスラエル視察記も、本コラムでいよいよ最終回となりました。前回までは、MEDinISRAEL2017展示会の概要やユニークな製品についてお伝えしてきました。最終回のコラムでは、本展示会の最終日に組まれていた現地医療機関ツアーの内容についてお届けいたします。熊谷、杉本は二手に別れて、イスラエルの有名な2つの病院を視察してきましたので、各々の病院についてご紹介いたします。
~Rabin Medical Center~
Rabin Medical Centerは、1,300病床と4,500人の職員を有するイスラエル最大の公立病院です。この病院だけでも非常に大きいですが、さらにイスラエル国内の14病院、1,400クリニック及び485薬局と連携し、”Clait”と呼ばれる医療ネットワークを形成しています。ネットワーク全体では、10,000人の医師を含む50,000人の職員が、年間12万件の手術を提供し、200万件の外来訪問に対応しています。
私が一番驚いたのは、高度な情報連携です。”Clait”ネットワーク全体で情報システムが連携しており、患者データ及び医師や看護師の業務データ等が共有されています。そしてその情報を治療や業務に積極的に活用しています。糖尿病外来の先生は、自分が担当している患者の血糖値データ等が時系列ですぐに把握できるため、個々の患者の容態に応じて効率的かつきめ細かな治療が出来ると言っていました。容態が不安定な患者に対してはしっかり時間をかけて診療を行い、逆に容態が安定している患者に対しては外来訪問を求めず、遠隔診療を行って薬を処方しています。
業務上のコミュニケーションにも、情報システムが積極的に活用されています。例えば医師が看護師に対して、ある業務の指示をシステム上で行うと、その指示が看護師のスケジュールに自動で反映され、業務の完了報告もシステム上で行います。スムーズなコミュニケーションと、業務の漏れの防止の双方を意識した仕組みが構築されています。
近年、日本においても患者情報の連携に向けた議論が活発になってきており、Rabin Medical Centerが参考になる点もあるかもしれません。但し、情報システムは一朝一夕で構築できるものではなく、職員の献身的な努力のもとに構築されたようです。Rabin Medical Centerの医師は、「新たなシステムの導入時には週3日ミーティングを行い、非常に大変だった」と振り返っていました。
~Assuta~
Assutaは、イスラエル国内に7病院を所有する民間病院グループで、年間125万人以上の患者を治療しています。イスラエルの人口は800万人強ですので、イスラエル人の7人に1人は本グループ病院で治療を受けている計算になります。また外科手術は年間9万件、不妊治療は1万件以上実施しているなど、最先端の医療を提供している病院として知られています。
更に、Assutaは、がん治療に力を入れていることで大変有名です。日本でも普及しつつある全身統合型PET MRやPET CTなどの最新機種を揃えており、その他にも放射線治療や化学療法、血液治療などのがん治療も積極的に行っています。がん治療に積極的な背景は、イスラエル人のがん発症率は高く、特に乳がんの発症率は世界の平均が女性12人に1人程度に対して、イスラエル人女性は8人に1人の割合で発症することなどが要因のようです。
またRabin Medical Centerと同様に、Assutaでも患者データをITで一元管理しています。電子カルテや検査結果、顧客満足度調査等の患者情報をITで管理して、医療従事者は常にタブレット等のIT機器で確認できるシステムを構築しています。IT技術を活用して、イスラエルの病院は医療の効率化を推し進めていることを学び、日本でも大変参考になる事項だと思います。
~むすびにかえて~
3回シリーズでお届けしてきました「革新的な医療機器展」イスラエル視察記シリーズは、お楽しみ頂けましたでしょうか。今回の視察を通して、イスラエルの革新的な医療技術を学んだとともに、弊社の海外ネットワークを更に強化することが出来ました。CDIメディカルは、引き続き海外展開の支援やユニークで付加価値の高い医療機器を国内へ紹介していきたいと考えています。最後まで、本コラムをご覧頂き誠にありがとうございました。
(文責:杉本・熊谷)