【CDIメディカルアイ】高収益健診センターの事例、病院経営の新潮流

 

高収益健診センターの事例、病院経営の新潮流

 

1. 病院が健診事業を強化する戦略的意義

CDIメディカルでは、近年、病院併設型の健診施設のご支援をさせて頂くケースが増えています。

がんや生活習慣病の予防・早期治療は、今や国を挙げて取り組むべき課題となっているにも関わらず、その受診率は依然として高いとは言えません。そのため、病院にとっても健診事業への注力と受診率向上への取組みは重要性を増しています。それに加えて、病院経営上も、健診事業を強化することには2つのメリットがあります。

1つは収益性の高さです。一般的な人間ドックにおいて、利用者1人あたり単価は4万円~5万円程度と、入院患者1人あたり単価とあまり変わりません。しかしながら、 入院診療と比較して医療資源の投入量が少ないため、収益性は高くなります。弊社のデータベースによれば、病院併設型では20~30%、単独型でも5~10%程度の利益率が見込まれます。(但し、所謂「定期健診」は単価が低いため、収益性も低く留まります)

図1

2つ目は、患者との関係維持に寄与することです。要精密検査者を病院で受け入れることにより、増患効果が期待できます。リピーターを増やすことで、潜在患者を増やすことにもなるでしょう。更に、病院で治療が終了した患者を、地域の開業医に逆紹介する際、「年に一度は当院の人間ドックを受診して、全身の検査をして下さい」と、(開業医と競合することなく)患者を繋ぎ止めることもできます。


図2-5

しかしながら、健診事業の強化を病院が独自で行うことは、困難を伴うケースもあります。まず、病院併設型施設では、診療と健診を兼務するスタッフが大半を占めます。そのため、診療を主に考えるスタッフの協力が得づらく、受診枠/検査の順序が制限されることがあります。また、それを改善しようにも、健診ではベンチマークとなる統計値が存在しないため、適正人員数や業務水準、サービスレベル等を他施設と比較することが難しいのです。

2. 取組み事例のご紹介

一方で、健診事業は自由診療であり、保険診療と比較して様々な打ち手があります。従って、創意工夫が結果に繋がりやすい事業であると弊社は考えています。以下に、多数の受診者を獲得している施設の取組みをご紹介したいと思いす。

① コンセプトの明確化

ハイエンド層を対象に、最先端の医療機器・きめ細やかなサービスを高単価で行うのか。リーズナブルなメニューで、多数の受診者を対象とするのか。それによって、メニューの構成、価格設定、サービスレベル等のあり方は大きく異なってきます。

例えば、「地域住民の健康管理/健康意識向上のため、『補助を使って安く受診する』ことを優先する受診者は受けてもらわなくても良い」と考える施設もあります。当然、ターゲット層は絞られますが、その分、受診者との深い繋がりができており、リピート率は90%に上っています。

② 営業の頻度・粒度の高さ

一般的に、4月からゴールデンウィーク明け・12~3月は「閑散期」と呼ばれます。しかしながら、中には「閑散期は存在しない」と明言される施設もあります。これらの施設では、頻度・粒度の高い営業が行われているように思います。

例えば、「大口顧客には最低月2回は訪問している」「年に1度は、過去3ヶ年程度のメニュー別受診者数・キャンセル数等を分析し、フィードバックする」などの取組みが行われています。これらの取組みを通じて、顧客との密接な関係が作られています。(一般企業の感覚で言えば、「当たり前」のことかもしれませんが、医療機関でこれができているところは少ないように思います。)

その結果、リピート契約の獲得、予約確定の早期化等に繋がっています。予約確定の早期化により、受診者数が不足する時期が把握できるため、その時期に合わせたキャンペーン等、先手を打った施策が検討されます。そのようなサイクルによって、(数年単位で時間はかかりますが)閑散期が無くなっていくのです。加えて、新メニューやオプションの訴求機会が多いため、単価の増加にも繋がっています。「閑散期は仕方ない」「単価は上げられない」という声をよくお聞きしますが、決してそのようなことはないのです。

③ オペレーションの可視化

受け入れた受診者に、なるべく待ち時間なく、スムーズに回ってもらうことも重要です。待ち時間発生の一番の要因になり得る、内視鏡検査、腹部超音波検査への送客の平準化は前提として行わなければなりません。その他、検査あたり時間、(機器台数を踏まえた)待ち許容時間等を設定し、スタッフに周知徹底している施設もあります。現場スタッフの認識を共通化することで、「同じ60分の待ち時間でも、1つの検査で60分待たせるのではなく、6つの検査で10分ずつ待たせる」といった受診者フローの工夫にも繋がっているようです。

3. 「当たり前」の徹底が強みになる

健診事業の強化は、病院経営に寄与するだけではなく、地域住民の健康増進にも繋がります。病院にとっては、今後も益々重要性が高まり、その巧拙によって業績や集患にも大きな影響を及ぼしていくことにもなり得るでしょう。

ご紹介した取組みは、いずれも「思いも寄らない」ことではありません。しかしながら、ある意味「当たり前」のことを、現場スタッフに浸透させ、徹底して実行していることが、これらの施設の強さであると言えます。健診事業の強化にあたって、「ここまでやっている施設がある」という目安になれば幸いです。

文責 西土井 修

西土井写真3

西土井 修

株式会社CDIメディカル 主査。

早稲田大学社会科学部卒。
株式会社日本経営を経て、現在に至る。
「医療機関の病棟再編シミュレーションの実施及び実行支援」、「医療機関の利益改善計画立案・実行支援」、
「医療機関の経営管理体制構築支援」、「医療機関の事業財務調査」、「医療機関の人事制度構築支援」、
「医療機関へのバランスト・スコアカード導入支援」、「医療機関の再生計画立案・実行支援」、等。