【CDIメディカルEye】ドイツのヘルスケア市場

海外ヘルスケア市場への挑戦 ― 新たな知見と可能性の探求

弊社は長年、日本国内のヘルスケア業界の動向など、専門的な知見に基づいたコラムを通じて、皆様にインサイトをお届けしてまいりました。

近年、多様化するグローバル市場において、私共も改めて視野を広げる必要性を強く感じております。そこでこの度、海外ネットワークおよび事業展開の強化の取り組みの一環として、国際的な専門家による特別寄稿シリーズを開始いたします。

本シリーズでは、各地の多様なヘルスケア市場の解説にとどまらず、最先端のトピックや革新的な取り組みを幅広く取り上げていくことを考えております。またこれらの知見を通じて、皆様との新たなビジネス機会の創出や事業のグローバル展開の可能性を探ってまいります。

最新のグローバルトレンドと、それぞれの国や地域に根ざした独自の視点。そんな生きた情報を、専門家とともにお届けしてまいりたいと思います。

1.マーケットインサイト

ドイツのヘルスケア市場はいわゆる市場規模においても、医療従事者数・患者数、関連技術メーカー数においても欧州第1位の市場である。(*国別でいえば日本と同程度)

ドイツの市場環境は他国同様に様々なグローバルトレンドの影響を受けている。人口動態の変化などの社会背景動向や、デジタル技術などの技術開発動向がその主な例といえる。

ドイツは2035年には人口の1/4以上(27.4%)が65歳以上の高齢者となる。2022年の時点で人口の約22.2%が高齢者となっており、すでに医療費全体の半分以上を占めている状況にある。ドイツでは医療保険への加入が義務づけられており、医療費全体の約2/3が公的および民間の医療保険でまかなわれている。(*公的医療保険の加入率は約9割)

ドイツは先進的な研究開発が商業化につながることが多い国でもある。特にライフサイエンス分野では顕著であり、分子診断、バイオ医薬品、生体材料、医療機器などの領域であてはまっている。

2.人口動態の変化

ドイツの人口動態の変化すなわち高齢化は、慢性疾患の罹患確率を高めている。人口の約45%が慢性疾患もしくは長期疾患を罹患しており、医療費全体の約80%を占めるに至っている。要介護者数は5年間の間に390万人から560万人に増加しており(2018 – 2023年)、2030年には600万人を超えるとみられる(*ドイツ人口の約7%)

技術開発動向 ① :新材料

新しい複合材料やバイオ技術を用いた生体材料の開発により、インプラント、医薬品、医療機器のさらなる発展が期待されている

技術開発動向 ②:積層造形

3Dプリンティングなどで使用する積層造形技術などの新しい製造技術は、これまでにない高い製造効率性や品質を実現している

技術開発動向 ③:デジタル化 

医療情報のデジタル化および安全性を担保したデータ交換は、より高品質・低コストに医療を提供することにつながっている

3.医療の提供体制(入院医療)

ドイツでは約1,900の医療機関が存在し、約50万床が稼働している(リハビリテーション施設や高齢者介護施設を除く)。近年、医療機関の数は減少傾向にある。小規模な総合病院の閉鎖や、効率化を目的とした病院間の統合が進んでいることによる。

4.イノベーションクラスター

ドイツのイノベーションクラスターは、ヘルスケア市場の成功において重要な役割を果たしており、企業はアカデミアの研究者やパートナー企業などとともに多数の開発プロジェクトに参加することができる。研究開発の初期段階から、スケールアップ・製造、さらに販売・マーケティングに至るまでのバリューチェーン全体において支援体制が整っていることで知られている。

文責:クリスチャン パルメ

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クリスチャン・パルメ(株式会社CDIメディカル メディカル アドバイザリーボード)

Gambro(現在はBaxter社の一部)やJostra AGなどの医療技術リーダー企業において、CEOおよび執行役員として40年以上にわたり、ヘルスケア業界で豊富な経験を持つ。World of Medicine AG、Xenios AG、Phenox GmbHなど、複数の医療機器企業の会長や取締役を務めた経験があり、自身のコンサルティング会社を設立して以来、ヘルスケアのスタートアップ企業の市場参入支援や、製薬・医療機器企業への戦略的助言に注力。

特に日本のヘルスケア市場は重点分野の一つとして捉えている。

ハイデルベルク大学経済学の学士号、プフォルツハイム大学経営学の修士号を取得。